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道弁連大会

議案第1号(決議)

4会共同提案

留置施設における面会室の増設を求める決議

当連合会は、関係機関に対し、2009年(平成21年)5月からの被疑者国選弁護対象事件の必要的弁護事件への拡大および公判前整理手続が必要的とされる裁判員裁判の実施に先立ち、速やかに、道内各留置施設における面会室を増設すること、少なくとも1施設2室以上とすることを強く要求する。

以上、決議する。

2008年7月25日
北海道弁護士会連合会

提 案 理 由

  1. 北海道内留置施設における面会室の設置状況
    道内留置施設における面会室は北海道警察本部(2室)、同本部の琴似留置場(3室)および札幌方面札幌中央警察署(3室、うち1室は弁護人優先)以外は、いずれも弁護人接見用と一般面会用を兼ねたものが1室だけという現状である。
    すなわち、旭川方面本部においては、旭川中央警察署・旭川東警察署をはじめとする全署において、また、釧路方面本部・北見方面本部の全署において、面会室は1室である。更に、函館方面本部の函館中央、函館西、森、八雲、木古内、松前、江差、せたな及び寿都の9警察署も、やはり面会室は1室という状況にある。
  2. 面会室の利用状況
    これまでも留置施設における面会室が1室しかないため、日中、一般面会が可能な時間帯で、他の弁護人の接見だけでなく、一般面会者とも競合することにより、また、それ以外の早朝または夜間等の時間帯でも、他の弁護人の接見と競合することにより、長時間待機したり、場合によっては、時間の都合上、接見自体を断念せざるを得ない事態が間々生じていた。
    ところが、改正刑事訴訟法(平成16年法律第62号)が施行され、2006年(平成18年)10月から私選弁護人選任申出制度及び被疑者国選弁護制度の運用が開始されたことにより、被疑者段階で弁護人が就く事件が増加した結果、弁護人及び弁護人となろうとする者(以下、「弁護人等」という。)による身柄を拘禁された被疑者・被告人(以下、「未決拘禁者」という。)との接見回数が総体として増加し、上記のとおり、長時間待機したり、接見自体を断念する事態が半ば常態化し、接見交通権が実質的には保障されない事態が増えていることが、当連合会を構成する各単位会において報告されるに至っている。
  3. 接見交通権と面会室問題
    (1) 刑事訴訟法第39条第1項が保障する未決拘禁者と弁護人との自由な接見交通権は、未決拘禁者にとって刑事手続き上最も重要な基本的人権であると共に、弁護人にとっても最も重要な固有権の1つであり、その保障は憲法第34条第1項及び国際人権法(国連被拘禁者処遇最低基準規則第93条、あらゆる形態の拘禁・収監下にあるすべての人の保護のための〔保護原則18-1〕及び弁護士の役割に関する基本原則〔弁護士の役割原則8〕など)の弁護人選任権に由来するものである。そして、同権利を保障するということは、単に未決拘禁者が弁護人を選任することを国家権力が妨害してはならないというにとどまらず、未決拘禁者に対し、弁護人を選任した上で、弁護人に相談し、その助言を受けるなど弁護人から援助を受ける機会を持つことを実質的に保障することを意味する。このことは判例上も確認されている(杉山国賠事件における最高裁昭和49年(オ)第1088号同53年7月10日第1小法廷判決・民集32巻5号820頁、安藤国賠事件における最高裁平成5年(オ)第1189号同11年3月24日大法廷判決・民集53巻3号514頁)。
    (2) そうすると、留置施設に十分な面会室がないことにより事実上接見ができない事態というのは、接見交通権が実質的には保障されておらず、未決拘禁者の人権及び弁護人の固有権が侵されている事態に他ならない。
    かかる事態をこのまま放置することは単に違法であるというに止まらず、違憲の疑いもあり、直ちに是正されなければならない。
  4. 2009年(平成21年)の被疑者国選弁護対象事件の拡大及び裁判員裁判開始に伴う事態の深刻化
    来る2009年(平成21年)5月から被疑者国選弁護対象事件が必要的弁護事件に大幅に拡大され、更に、公判前整理手続が必要的とされる裁判員裁判が開始されれば、弁護人による接見回数が総体として飛躍的に増加することが確実であり、上記のとおり長時間待機したり、接見自体を断念する事態が半ば常態化し、面会室不足による弁護人と未決拘禁者との接見交通権が実質的には保障されない事態がより一層深刻化するものと考えられる。
    また、被疑者と接見する弁護人が増加し、接見時間が長くなると、拘束されている被疑者が楽しみにしている家族との面会を阻害する結果ともなり、国民の人権を不当に制限することになりかねない。
  5. 弁護士会による増設申入れ等
    当連合会の各単位会は、函館弁護士会においては、第一審強化方策函館地方協議会において面会室増設を繰り返し協議議題として提案し、裁判所及び検察庁から北海道警察函館方面本部に対し伝達してもらうだけでなく、被疑者国選弁護制度の運用開始前の2006年(平成18年)9月5日に、北海道警察本部(留置管理課担当者)に対し直接、口頭で申入れ、2007年(平成19年)9月27日開催の国選弁護関連業務に関する協議会においては、この問題を議題として提案したうえ、北海道警察函館方面本部に対して要望し、2008年(平成20年)3月11日には北海道警察本部及び同函館方面本部に対し文書にて、それぞれ函館中央署及び函館西署の各面会室の増設の申入れを行っている。
    また、釧路弁護士会においても、2008年(平成20年)5月21日、速やかに面会室を増設するよう、釧路署及び帯広署についての増設につき北海道警察本部釧路方面本部に対し、北見署についての増設につき同北見方面本部に対しそれぞれ申入れ、同様の申入れを北海道知事及び北海道警察本部長に対しても行っている。
    更に、旭川弁護士会も2008年(平成20年)7月2日北海道警察旭川方面本部に対し、旭川中央署・旭川東署の面会室増設につき、同様の申入れを行ったところである。
    しかしながら、これらの申入れにもかかわらず、設置基準のことなどを理由に、今のところ、具体的増設の動きはない。
  6. 結語
    そこで、当連合会は、関係機関に対し、2009年(平成21年)5月からの被疑者国選弁護対象事件の必要的弁護事件への拡大および裁判員裁判の実施に先立ち、速やかに、道内各留置施設における面会室を増設すること、少なくとも1施設2室以上とすることを強く要求するものである。

以 上

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