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道弁連大会

議案第2号(決議)

4会共同提案

消費者行政一元化と北海道における消費生活相談の拡充を求める決議

  1. 現在、消費者行政を担う行政組織の検討が進められているが、近年の消費者事件においては、ガス湯沸器一酸化炭素中毒事故などの製品事故が多発し、また住宅の耐震構造偽装が発覚するなど、製品・住宅の安全性が大きな問題となった。昨年には一連の食品偽装表示事件が発覚し、「ミートホープ」や「白い恋人」といった北海道に関わる事件も発生し、食品の表示に関する信頼が損なわれた。さらに、本年は、輸入冷凍餃子への毒物混入事件によって食品の安全性に対する社会的不安が広がった。のみならず取引分野においても年々巧妙化する悪質商法、英会話教室NOVAや木の城たいせつの倒産による消費者トラブルなど、多種多様な消費者被害が次々と発生ないし顕在化してきている。これに対し、現在の縦割行政は、それぞれの管轄と法的手続が複雑に分岐・錯綜しているため、これらの被害発生の防止及び被害救済の面において、行政の役割が強く求められている。
    そのため、消費者庁設立にあたっては、下記の事項を実現することを求める。
    (1) 消費者庁が消費者政策の企画・立案を行うとともに、迅速な被害防止及び被害救済を図ることができるよう、事業者に対する規制権限を直接行使するために必要な立法及び関係法の移管を実現すること。
    (2) 消費者庁は、全国各地の消費生活相談窓口、消費者、事業者、公益通報者からの被害関連情報を一元的に集約し、調査・分析・公表する権限と原因究明機関を持つものとすること。
    (3) 消費者庁及び関係省庁が調査把握した情報に基づき、違法収益の機動的な凍結及び剥奪を行い、被害者に返還・分配する制度の導入を、適正手続保障の観点を保持しながら検討すること。
    (4) 各消費者や消費者団体に対し、被害調査や勧告権限発動を求める申立権を付与するなど、消費者庁の運営において消費者の参加と監視が可能な制度とすること。
  2. 北海道の消費生活相談体制は、道立消費生活センター、支庁における消費生活相談推進員体制及び各市町村に設置された消費生活相談窓口において行われているが、北海道内各市町村の消費生活相談に関わる人材育成及び現場における支援のため、各市町村の身近な相談支援体制として位置付け、強化・存続させることが求められている。
    さらには、各支庁の消費生活相談体制においても、消費生活の相談に関わるあっせん等を積極的に行うべきであるが、このような支庁相談体制の重要性に鑑みるならば、各支庁における消費生活相談推進員体制については、常勤・複数体制とするなど、抜本的に強化することが不可欠である。
    道財政、市町村財政ともに厳しいとされる中、国はその責任において、地方行政の充実・拡大させるため、その必要な予算を確保すべきである。

2008年7月25日
北海道弁護士会連合会

提 案 理 由

  1. 近年は、決議でも述べているとおり、多数の消費者事件が発生し、多数の生命・身体の安全や財産が脅かされるなど、行政による消費者被害の防止・被害の回復を図ることが強く求められている。
    このような状況下において、福田康夫内閣総理大臣は、消費者・生活者重視への政策転換、消費者行政の一元化・強化の方針を打ち出した。これを受け、自民党消費者問題調査会は、本年3月19日、「産業育成官庁から独立し、消費者・生活者目線で他省庁に司令を出す『消費者庁』の新設(強い監督権限)」、「地方消費者行政の充実」、「違法収益のはく奪」、「相談窓口の一元化」などを骨子とする最終とりまとめを行った。また、民主党も消費者保護官(オンブズマン)構想を提言するなど、野党各党も検討を進めている。
    本年4月23日には、福田総理大臣は、政府が設置した消費者行政推進会議において、「消費者を主役とする『政府の舵取り役』としての消費者庁(仮称)を来年度から発足させる」との意向を明らかにした。
    さらには、本年5月21日には、消費者行政推進会議は、「消費者行政推進会議取りまとめに向けて」(素案)を発表し、消費者・生活者の視点に立った行政への転換を示した。
    これは、消費者に身近な問題を扱う法律は消費者庁に移管することや、地方消費者行政を強化することなど、消費者・生活者重視の施策を目指すものであり、当連合会はこの基本的な方向性を評価するものである。
    消費者庁は、地方における消費生活相談その他の地方消費者行政の強化に資するとともに、全国各地から寄せられる被害情報を集約・分析し、被害情報を地方に周知するなどの支援を担わなければならず、消費者行政の一元化は不可欠である。
  2. 地方消費者行政の強化は、住民の身近な相談窓口として重要であるが、近年、北海道においては、消費者行政予算の縮小、指定管理者制度への移行、さらには支庁における消費生活相談体制の廃止の検討など、地方消費者行政の強化に逆行する動きが見られる。
    北海道内の各市町村においては、そのすべての市町村において、消費生活相談窓口が設置されたとはいえ、予算・人員の制約から一般の行政担当者が兼任する相談窓口も多く、知識やノウハウの蓄積、経験を重ねた適切な対処が困難な状況にある。
    そのため、地方在住の消費者が適切・迅速な助言や助力を受けられず、高齢者の訪問販売被害、農村部を狙った電話リース商法など、深刻な被害が後を絶たない状況があり、北海道が本年3月3日に発表した「第2次消費生活相談体制整備推進計画」(素案)においても指摘されているところである。
    消費者の権利擁護の理念に立ち、消費者が主役の消費者行政を実現するためには、市町村や北海道における支庁など消費者に身近な地方相談窓口において、人的及び物的体制を十分に確保し、適切な相談と迅速なあっせん解決が促進されなければならないが、とりわけ北海道は、全国からみても、広大な地域と低い人口密度という特殊事情があり、他方で支庁制度が北海道行政を補完する役割を担っているところであるが、財政規模が小さく、これら人的及び物的体制を十分に確保することが困難な状況に陥っている。
    町村等の財政規模の小さな自治体にその責任を押し付けてはならず、国、北海道において、身近な相談体制としての支庁における相談体制の充実も不可欠である。
    地方における消費者行政は、全国等しく享受すべきものであり、その予算の裏付けは国の責務である。

以 上

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