1 佐賀県警察本部は、本年9月8日、科学捜査研究所の技術職員が7年以上にわたって、実際には行っていないDNA型鑑定の鑑定書を作成するなどの不正行為(以下「本件不正行為」という。)を行っていたことを明らかにした。
 この技術職員が担当した632件のうち、不正が確認されたものは130件にのぼり、そのうちの16件の鑑定結果は、検察庁に実際に証拠として送付されていたということである。

2 日本の刑事司法は、長らく自白偏重に陥っており、これまでも捜査機関による自白獲得のために深刻な人権侵害が行われ、多くのえん罪が生まれてきた。自白がない限り身体拘束が長引く捜査実態は、国際社会から人質司法として今もなお強く批判されている。
刑事司法手続では、本来、客観的証拠が重要視されなければならず、とりわけDNA型鑑定は、個人を識別するために行う科学的手法として、被疑者・被告人と犯人の同一性を立証するための重要な証拠価値を有することが期待されるものである。
その科学的証拠自体に捜査機関による意図的な虚偽が混在し、これが長期間見過ごされてきたというのであれば、それは刑事司法に対する重大な背信行為に他ならない。この間にえん罪が生まれていた可能性や刑罰権の適正な行使がなされなかった可能性があり、刑事司法に対する国民の信頼を大きく失墜させるものである。
当連合会は、本件不正行為を強く非難する。

3 佐賀県警の本部長は、実態の解明や再発防止に向けた第三者委員会の設置に否定的であったと報じられたが、事態を重く見た佐賀県議会は、独立性、透明性、専門性などを備えた第三者による調査を行うことを求め、全会一致で決議を行った。
 警察庁は、佐賀県議会や国民による、このような厳しい非難の声に対応すべく、佐賀県警に対する特別監察を実施するに至ったが、そもそも特別監察は、警察組織内の手続に過ぎず、第三者性、公平性、中立性を欠いている。結局は、内部調査のみで済ませようとする佐賀県警の意向に沿うものであり、不十分と言わざるを得ない。
失われた信頼を取り戻すためには、捜査機関から独立した科学鑑定の専門家や弁護士、刑事法学者らによって構成される第三者機関を設置し、徹底した原因究明・再発防止のための調査が行われる必要がある。

4 さらに、捜査機関による不正行為がこれまでも繰り返し行われてきたことに鑑みれば、本件不正行為を佐賀県警だけの問題に矮小化させることなく、第三者機関によって全国的な検証を行うことも必要である。
これらの検証等が適切になされない限り、失墜した刑事司法に対する国民の信頼を取り戻すことはできない。

5 よって、当連合会は、本件不正行為を強く非難するとともに、警察庁、佐賀県警に対し、捜査機関から独立した第三者機関による徹底的な調査と再発防止策の実施、さらには全国的な検証を行うことを強く求めるものである。

令和7年11月8日
北海道弁護士会連合会
理事長  松 田   竜