提 案 理 由
1 北海道における再生可能エネルギーを取り巻く状況
北海道における再生可能エネルギー(以下「再エネ」という。)の近年の状況及び施策の状況については、北海道が設けた会議体である「エネルギー施策懇話会」による2020年3月付報告書が取りまとめている。同報告書が、「エネルギー基地北海道」と掲げて、北海道のポテンシャルの有効活用、地域経済活性化、国のエネルギー施策への貢献という視点を示しているのは、当連合会が2012年7月20日開催した定期大会記念シンポジウム「再生可能エネルギー基地北海道~北海道の新たなる可能性」において示した方向性と同趣旨といえる(同報告書7頁。ただし、同報告書が「国のエネルギーミックスに貢献」という表現を用いて原子力発電の利用を前提としているのに対し、当連合会が脱原発のためにも再エネの推進が必要であるとしている点に大きな違いがあることに留意が必要である。)。2012年時点では、未だ再エネの可能性について提言していたものが、現在においては既に重要な電源となるに至り、特に北海道においては、政府の2021年策定の第6次エネルギー基本計画における2030年度の目標を既に達成している状況にある。それでも、既存の建築物の屋根への太陽光パネルの設置や営農型太陽光発電施設の普及など、周囲の環境への影響の少ない方法による再エネ普及の余地は未だ多く、地球温暖化対策推進法に基づく実行計画の実施、実現のためにも更なる再エネの推進が必要である。
他方で、この間、国及び自治体による再エネ推進を背景に、全国において再エネ施設の乱開発とも言いうる事例が多数生じてきた中、こうした事象を適切に規制する制度がないのが現状である(2022年意見書には、全国の乱開発事例が列挙されている。)。この点、北海道は、上記エネルギー施策懇話会報告書に付随して、「省エネ新エネ促進条例の施行状況等の報告」を公表しているところ、この報告においては、「本条例に規制に係る規定は設けておらず、また今後も設ける必要はない。」としている(同報告4頁)。規制は他の法制によるという趣旨であるかもしれないが、仮に北海道による規制措置が不要であるという趣旨であるとすれば適当な検討結果とは思われない。
生活環境や自然環境への悪影響を防ぐ適切な規制をしなければ、住民の理解を得ることはできず、ひいては再エネ事業に投資をしようという事業者のマインドも挫くものとなり、再エネの推進は不可能である。また、適切な規制の確立は、事業者の予測可能性に資するという観点からも望ましいものである。
2 再エネ発電施設の立地規制
従前、再エネの利点は、同じく自然の恵みを基礎としている点で農林水産業と親和的であり、土地に固着した産業として、地域の持続性につながるものと提唱されてきた。当連合会の2012年宣言もこうした観点に立っている。他方で、日本は一般に土地利用規制が他の先進諸国に比較して貧弱であるという見解が学界では従前から強く主張されてきたところ、農山漁村での再エネ設備の建設推進は、様々な発電事業者が農山漁村に無秩序に参入してくることになりかねず、地域資源の濫費と地域社会の疲弊をもたらしかねないとも主張されていた。再エネ特措法にも立地に関する規制・誘導に関する規定は全く設けられることはなく、要件さえ満たせば、どのような立地の再エネ発電施設の発電であっても買取りの対象とされた。乱開発と評価される事例が多発している状況においては、規制が必要であることは明らかである。国も一部規制の方向の法改正を実施しているものの十分とは言い難い。
そのため、上記の日弁連2022年意見書及び2025年意見書は、森林法、環境影響評価法、再エネ特措法の改正を提言したが、現行法においても日本の自然保護法制一般に運用面の問題があり、これらを見直すことで、再エネ発電施設の開発の適正化につながる。自然が多く残り、人口密度の低い北海道においては、再エネ発電施設の開発からの自然環境の保全の必要が特に高いため、当連合会は、2012年宣言で示した方向性を維持した上で、主として自然環境の保全のための国及び北海道の土地利用規制権限の運用面での適切な行使を求める。
3 生物多様性基本法
本決議に関わる自然公園法(1957年施行)、自然環境保全法(1972年施行)、種の保存法(1993年施行)の運用及び北海道環境影響評価条例(1978年施行、1998年全面改正)の内容は、これらの後に制定された生物多様性基本法の掲げる基本原則に応じたものとはなっておらず、また同法の規定する国及び自治体の責務を果たしているものとは言えない。
自然とは生物群を含む生態系であり、自然環境保全の目的は生物多様性の保護にある。そして、地球規模で加速度的に種が絶滅しており、生物多様性の喪失は不可逆的に進行している。しかし、わが国の環境法制が公害対策を中心に発展してきた経緯から、生物多様性の保全との観点での法整備は長らく実施されなかった。その後、2008年に制定されたのが、生物多様性基本法である。
生物多様性は複雑かつ微妙な均衡のもとで成り立っており、その科学的知見は今なお不十分である。他方で、生物多様性の損傷は不可逆的であり、種の絶滅という取り返しの付かない結果をもたらす。このため、科学的不確実性について対策を延期する理由に用いてはならず(予防原則)、不確実で非定常性を備えた野生生物や生態系の保護管理は絶えずモニタリングによる検証とそのフィードバックを実施する必要がある(順応的管理)。
生物多様性基本法は、生物多様性の概念を定義してその重要性を示すとともに、環境基本法が明確化しなかった予防原則を明文化し、かつ、順応的管理の取り組みを定めるなど、従来の環境法制を更に推し進めた条項が定められた。そして、自然保護法制は、生物多様性基本法が示す基本原則及び施策に則り解釈、運用されなければならないことを示し、生物多様性に関する基本法としての位置づけを明確化している。このような生物多様性基本法の重要性とその意義を踏まえて、別紙において本決議との関係で特に参照されるべき条項を引用して紹介する。別紙に引用する基本原則や国の施策・責務を踏まえ、以下の各自然保護法制の運用及び内容を改めるべきである。
4 自然公園法の運用の問題(決議事項1及び2)
自然公園法は、国立公園及び国定公園に指定された地域を、保護の必要性に応じて特別地域(同法20条1項)、海域公園地区(同法22条1項)、普通地域(同法33条1項)に区分する。さらに、特別地域は、特別保護地区(同法21条1項)、第一種特別地域、第二種特別地域、第三種特別地域に区分される(同法施行規則9条の12)。
特別地域内においては、工作物の建築、樹木の伐採は環境大臣(国立公園)又は都道府県知事(国定公園)の許可がなければすることができない(同法20条3項)。すなわち原則禁止とされている。特別保護地区でも同様であるが(同法21条3項)、保護の必要が高い地域であるため許可の判断のための裁量は狭くなる。
同法20条4項及び同法21条4項は、許可基準を省令で定めるように委ねており、具体的には同法施行規則11条となる。同条11項は、風力発電施設について基準を定めている。自然保護に関するものとしては、特別保護地区及び第一種特別地域では建設が原則禁止されている(同項1号)。また、第二種特別地域及び第三種特別地域においても、植生の復元が困難な地域等では建設が禁止されている(同項1号)。植生の復元が困難な地域等とは、高山帯や湿原等植生の復元が困難な地域、野生動植物の生息地、生育地として重要な地域等でかつ天然記念物の指定等がされている地域を意味する。ただし、これらの地域であっても、公益上必要であり、かつその目的を達成することができない場合には建設が許可される可能性がある。
これらの地域の規制とは別に、普通地域も含め一般的に、野生動植物の生息又は生育上その他の風致又は景観の維持上重大な支障を及ぼすおそれがないことが建築の許可基準とされている(同項2号)。
太陽光発電施設については、同条12項が、11項を引用することで上記の基準と同様の規制となっている(ただし書きにおける公益上の除外規定については、2,000平方メートル以下の太陽光発電施設と限定されている。)。
近年、公益上の除外規定について問題となったのが、知床国立公園内の特別保護地区に指定された知床岬における携帯電話基地局に電力を供給する太陽光発電施設である。環境大臣は、2024年3月29日付けで電気通信事業者に携帯電話基地局設置について許可をした。この点、環境省は、漁業者等の安全を図る上で必要という判断から公益性を認め、他の手段では目的を達成できないとして基準に適合していると説明している。この問題は、知床世界自然遺産地域科学委員会において国の天然記念物に指定されているオジロワシの行動・繁殖状況を含む生態系・景観調査が必要とされ、結果として事業者が整備中止方針を決定したが、衛星電話等の衛星通信サービスの利用・普及で代替できる可能性が指摘されている。
日弁連は、2026年3月19日、「自然公園法上の特別保護地区等における工作物設置等の許可において環境大臣の厳格な審査等を求める意見書」を公表した。同意見書の意見の趣旨1項は、公益性の判断において、公益の目的のみならず、手段の必要性(代替手段の有無)等も十分に考慮した上で、公益と自然環境保護の公益との厳密な比較衡量を求めているところ、このことは、再エネ発電施設開発に伴う自然環境の悪化の問題一般に該当するので、当連合会としても同様の見解である。
さらに、生物多様性基本法による国の責務からすると、環境大臣による審査を適正に行うべきであることは、第二種特別地域、第三種特別地域及び普通地域においても同様であるので、野生動植物の生息等の維持上重大な支障を及ぼすおそれがないものであることの基準の審査を慎重に行うべきである。
5 自然環境保全法及び北海道自然環境保全条例に基づく地域指定(決議事項3)
上記の自然公園法と並び、自然環境保全法は、自然環境ひいては生物多様性を保全するために地域指定制度を設けている。北海道自然環境保全条例は同法その他の法令と相まって、自然環境を保全することを目的とし(同条例1条)、同様の地域指定制度を設けている。
自然環境保全法22条に基づく自然環境保全地域の指定のうち、優れた天然林が相当部分を占める森林の区域(同条1項2号)、その区域内に生存する動植物を含む自然環境が優れた状態を維持している海岸、湖沼、湿原又は河川の区域(同項4号)、その海域内に生存する熱帯魚、さんご、海藻その他の動植物を含む自然環境が優れた状態を維持している海域(同項5号)、植物の自生地、野生動物の生息地その他の政令で定める土地の区域でその区域における自然環境が前各号に掲げる区域における自然環境に相当する程度を維持しているもの(同項6号)が、再エネ発電施設の開発規制に関わる区域と考えられる。同法の地域指定においては、かなり広大な規模が要件とされており、また自然公園との重複指定がされないことから、指定地域は多くない。
これに対し、都道府県は、条例に基づき、自然環境が自然環境保全地域に準ずる土地の区域を、都道府県自然環境保全地域に指定することができ、多くの地域が指定されている。もっとも、十分な環境規制がされているとは言い難いと指摘されている。
自然環境保全地域のうち特別地区に指定されると、工作物の新築や木竹の伐採等が許可制となり(法25条4項、17条1項)、野生動植物保護地区に指定されると、野生動植物の損傷が禁止される(法26条3項)。普通地区では、工作物の新築等が届出制となり(法28条1項)、環境大臣は自然環境保全に必要な限りで行為の禁止等必要な措置を命ずることができる(同条2項)。北海道自然環境等保全条例も同様の規制手段を設けている(同条例14条、17条、18条、19条)。
再エネ発電施設の開発は、国の政策で推進されている一方、許認可権限と結びついたゾーニング制度等の環境保全を図る担保措置はされていない。そのため、環境大臣及び北海道知事は、再エネ発電施設の開発による自然環境の破壊を防ぐために、自然環境保全法及び条例に基づく地域指定の権限を積極的に行使して、その適正化を図るべきである。
6 文化財保護法の運用の問題(決議事項4)
ある動植物が天然記念物と指定された場合、当然にその生息地や自生地の保護がされるのか、それとも地域の指定がなければ保護されないのか、条文の解釈について問題がある。
文化財保護法2条1項は、「文化財」の定義を示し、同項4号は、「動物(生息地、繁殖地及び渡来地を含む。)、植物(自生地を含む。)及び地質鉱物(特異な自然の現象の生じている土地を含む。)で我が国にとつて学術上価値の高いもの(以下「記念物」という。)」とする。文部科学大臣は、記念物のうち重要なものを天然記念物(同法109条1項)、特に重要なものを特別天然記念物(同条2項)に指定することができる。天然記念物に指定されると、その現状を変更し、又はその保存に影響を及ぼす行為をしようとするときは文化庁長官の許可を得なければならず(同法125条1項)、許可なくこうした行為をした場合(同法197条)及び天然記念物を滅失、毀損又は衰亡させた場合に刑事罰が規定されている(同法196条)。
他方で、同法128条は、「文化庁長官は、史跡名勝天然記念物の保存のため必要があると認めるときは、地域を定めて一定の行為を制限し、若しくは禁止し、又は必要な施設をすることを命ずることができる」とする。
文部科学省(文化庁)は、天然記念物に関して、「種の指定」の場合と「生息地の指定」の場合とを分け、生息地の指定をしていない限り、生息地は天然記念物として保護されないという運用をしている。
しかし、同法2条1項4号の文言解釈からすると、動物の「種」が天然記念物として指定されれば、当然に生息地、繁殖地及び渡来地を含む動物が保護の対象となるはずである。たしかに、同法128条は地域を定めて一定の行為規制をすることを規定しているが、これは天然記念物の保存のために必要があるときに定めることができるという任意規定であり、この規定の存在故に、地域を指定しない限り、「動物」に含まれるとされる生息地が保護の対象から外れるという解釈には無理がある。
生息地、繁殖地が開発されれば動物の生育に影響が生じることは当然のことであり、だからこそ同法2条1項4号の動植物の定義において生息地や自生地を含むと明記されたと解釈される。生物多様性基本法14条1項が「国は、地域固有の生物の多様性の保全を図るため、我が国の自然環境を代表する自然的特性を有する地域、多様な生物の生息地又は生育地として重要な地域等の生物の多様性の保全上重要と認められる地域の保全」措置を講ずると国の責務を明示していることからも、生息地の指定をしない限り天然記念物たる動物の生息地を保護しないという消極的な対応は、許されないものと考えられる。
文化財保護法の解釈、運用が適切に行われれば、天然記念物に指定された動物の生息地、生育地、渡来地、植物の自生地に再エネ発電施設が設置されるというトラブルは排除されることになる。
7 種の保存法の運用の問題(決議事項5)
絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(以下「種の保存法」という。)9条は、国内希少野生動植物等の「捕獲、採取、殺傷又は損傷(以下「捕獲等」という。)」を禁止する。環境省は、動植物種の生息地・生育地の損壊は「捕獲等」に該当しないとする見解を示している。すなわち、環境省は、「殺傷」を生きている動物の個体の生命活動の全部又は一部を損なうこと、「損傷」を生きている植物の個体を傷つけることと解釈する。その上で、生育地及び生息地を劣化させる行為はこれに含まれないとの運用をしている。しかし、生息地及び生育地は、その個体が生命活動を維持するために必要な環境である。したがって、生息地及び生育地を劣化させる行為は、その個体の生命活動の全部又は一部を損なうことにほかならない。よって、「殺傷」及び「損傷」はその個体の生命を直接侵害する行為のみならず、生息地及び生育地を劣化させることによりその個体の生命を侵害する行為も含むものと解釈することが相当である。
また、日本の種の保存法のモデルとして考慮されたアメリカ合衆国の絶滅の危機に瀕する種の保存法(Endangered Species Act、通称「ESA」)の「捕獲(taking)」の解釈を巡る論争は、それが決して不合理ではないことを示唆している。ESA9条(a)は、takingを禁止し、同3条(19)はその定義を「苦しめ、害を与え、狩り、撃ち、傷つけ、殺し、罠をしかけ、捕らえ、収集する」あらゆる試みを含むとする。内務長官は規則において「害を与える(harm)」を「繁殖、摂食や身を隠すといった本質的な行動様式を著しく損なうことで野生生物を実際に殺し、傷つけるような重要生息地の改変又は劣化」を含めると定義してきた。この定義について争われた事件で、アメリカ連邦最高裁は、種の絶滅を防ぐという法の趣旨に照らし、当該規則の解釈は妥当であるとした(もっとも、近時、トランプ政権は当該規則の撤回を提案している。)。
このように、野生生物の「捕獲等」の定義は、法の目的に則して広く解釈し得るものである。
日本の種の保存法4条1項は、「絶滅のおそれ」とは、「野生動植物の種について、種の存続に支障を来す程度にその種の個体の数が著しく少ないこと、その種の個体の数が著しく減少しつつあること、その種の個体の主要な生息地又は生育地が消滅しつつあること、その種の個体の生息又は生育の環境が著しく悪化しつつあることその他のその種の存続に支障を来す事情があることをいう」と定義する。個体の数の減少だけでなく生息地、生育地の消滅を防ぐために「捕獲等」が禁止されていることからすると、日本でも「捕獲等」に生息地又は生育地の損壊が含まれ、こうした地域での再エネ発電施設の開発が禁止されるという解釈も十分可能である。
また、このような解釈を経なくとも、種の保存法には区域指定の制度がある。環境大臣は、国内希少野生動植物種の保存のため必要があると認めるときは、その個体の生息地又は生育地及びこれらと一体的にその保護を図る必要がある区域であって、その個体の分布状況及び生態その他その個体の生息又は生育の状況を勘案してその国内希少野生動植物種の保存のため重要と認めるものを、生息地等保護区として指定することができる(同法36条1項)。そして、生息地等保護区の区域内で特に必要があると認める区域については管理地区と指定することができる(同法37条1項)。管理地区内に工作物を設置するには環境大臣の許可が必要となり(同法37条4項1号)、生息地等保護区内に工作物を設置するに当たっては、国内希少野生動植物種の保存に支障を及ぼさない方法で行わなければならないという規制が及ぶ(同法36条12項)。
環境大臣は、生物多様性基本法の国の責務並びに種の保存法の目的及び上記の解釈可能性に照らし、積極的に生息地等保護区及び管理地区を指定すべきである。
8 地域指定と財産権
私有地について上記4ないし7のような地域指定を行うことは、土地所有者の財産権を一定程度制約する。国も自治体もそのような観点から積極的な指定を進めなかった背景がある。しかし、「生物多様性は人類の存続の基盤」(生物多様性基本法前文、2条2項)であり、その毀損は絶滅という不可逆的な結果をもたらすものであるから、予防原則の観点からも(同法3条3項)、財産権その他の私権との衝突をおそれて謙抑的になるべきではない。また、自然公園法、自然環境保全法、文化財保護法及び種の保存法のいずれにも、損失補償規定が設けられているのであり、財産権への配慮は既に法律が予定している。むしろ、事前に適正な法律上の手続を履践し、地域指定を行うことで、再エネ施設開発事業者としても予測可能となり、突然の反対により事業が進められなくなるという事象を回避できるといえ、規制が再エネの適正な普及にもつながる。
9 北海道環境影響評価条例第二種事業の拡大について(決議事項6)
再生可能エネルギー発電施設に関する環境影響評価法の改正等による対応については、日弁連2022年意見書のとおりであり、同法の対象事業規模については、同意見書の趣旨1(2)②で言及されている。2021年10月31日施行の環境影響評価法施行令の改正により、第二種事業(環境影響評価法は、必ず環境影響評価を行わせる一定規模以上の事業(第一種事業)と、第一種事業に準ずる規模を有する事業(第二種事業)とを定め(法2条2項、3項)、第二種事業については、個別の事業や地域の相違を踏まえて環境影響評価の実施の必要性を個別に判定する仕組み(スクリーニング)を採用している。)の対象規模要件が、風力発電施設については、従前7500キロワット以上とされていたものが3万7500キロワット以上とされた。同意見書は、従前の7500キロワット以上に戻すべきと提言する。この点、北海道環境影響評価条例の規模要件は、風力発電施設については5000キロワット以上1万キロワット未満を第二種事業としており、国の大幅緩和に追随していない点で評価される。
他方で、同条例は、「太陽電池発電所」(環境影響評価法及び道条例で用いられる文言)については、2万キロワット以上4万キロワット未満を第二種事業の対象としており(同条例施行規則3条別表第1、5キ及びク)、風力発電や地熱発電の施設が5000キロワット以上としている(同別表第1、5オ、カ、ケ、コ)のに比べ、大幅に規模要件が大きく、環境影響評価の対象となる範囲が狭いものとなっている。太陽光発電施設は、その性質上広大な面積を必要とするものであり、環境への影響が他の発電施設に比較して小さいということはできない。現に、北海道内の特定の地域で計画されている複数のメガソーラー事業では、事業規模が1万9900キロワット程度で計画されている。これらの面積は31.3ヘクタールから45.1ヘクタールと広大であり、環境への影響が危惧されるが、現状の道条例の対象規模である2万キロワットをわずかに下回り、道環境影響評価条例の対象外である。自然環境が豊かな北海道においては、他の地域に比べて特に環境への配慮が必要であるといえるので、同条例の太陽電池発電所の第二種事業の最低規模要件は、地熱発電所及び風力発電所と同様に5000キロワット以上とすべきである(なお、環境影響評価法61条は、法律では対象とならない規模の事業を条例により対象とすることを認めている。)。
近時の報道によれば、現行の環境影響評価法の太陽光発電施設の規模要件を引き下げ、第一種事業を2万キロワット以上、第二種事業を1万5000キロワット以上とする環境省の方針が示されている。この動きに合わせ、道条例の第二種事業の上限は2万キロワット未満とすべきである(2万キロワット以上を第一種事業とする。)。
10 結語
当連合会は、国及び北海道が自然環境その他の環境を保全するための適切な規制権限を行使することで、かえって再生可能エネルギーへの転換が進むものと考え、標記のとおり決議する。
以上
別紙
(持続可能な利用)
「生物の多様性の利用は、社会経済活動の変化に伴い生物の多様性が損なわれてきたこと及び自然資源の利用により国内外の生物の多様性に影響を及ぼすおそれがあることを踏まえ、生物の多様性に及ぼす影響が回避され又は最小となるよう、国土及び自然資源を持続可能な方法で利用することを旨として行われなければならない」(生物多様性基本法3条2項)。
(予防原則、順応的管理)
「生物の多様性の保全及び持続可能な利用は、生物の多様性が微妙な均衡を保つことによって成り立っており、科学的に解明されていない事象が多いこと及び一度損なわれた生物の多様性を再生することが困難であることにかんがみ、科学的知見の充実に努めつつ生物の多様性を保全する予防的な取組方法及び事業等の着手後においても生物の多様性の状況を監視し、その監視の結果に科学的な評価を加え、これを当該事業等に反映させる順応的な取組方法により対応することを旨として行われなければならない」(同条3項)。
(長期かつ継続的対応)
「生物の多様性の保全及び持続可能な利用は、生物の多様性から長期的かつ継続的に多くの利益がもたらされることにかんがみ、長期的な観点から生態系等の保全及び再生に努めることを旨として行われなければならない」(同条4項)。
(地域固有の生物の多様性の保全に関する国の責務)
「国は、地域固有の生物の多様性の保全を図るため、我が国の自然環境を代表する自然的特性を有する地域、多様な生物の生息地又は生育地として重要な地域等の生物の多様性の保全上重要と認められる地域の保全、過去に損なわれた生態系の再生その他の必要な措置を講ずるものとする」(同法14条1項)。
「国は、生物の多様性の保全上重要と認められる地域について、地域間の生物の移動その他の有機的なつながりを確保しつつ、それらの地域を一体的に保全するために必要な措置を講ずるものとする」(同条3項)
(自然資源の適切な利用に関する国の責務)
「国は、持続可能な利用の推進が地域社会の健全な発展に不可欠であることにかんがみ、地域の自然的社会的条件に応じて、地域の生態系を損なわないよう配慮された国土の適切な利用又は管理及び自然資源の著しい減少をもたらさないよう配慮された自然資源の適切な利用又は管理が総合的かつ計画的に推進されるよう必要な措置を講ずるものとする」(同法17条)。
(他法令についての検討及び措置義務)
「政府は、この法律の目的を達成するため、野生生物の種の保存、森林、里山、農地、湿原、干潟、河川、湖沼等の自然環境の保全及び再生その他の生物の多様性の保全に係る法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする」(同法附則2条)。
(地方公共団体の責務)
「地方公共団体は、基本原則にのっとり、生物の多様性の保全及び持続可能な利用に関し、国の施策に準じた施策及びその他のその地方公共団体の区域の自然的社会的条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する」(同法5条)。