提 案 理 由
第1 はじめに
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日本国憲法は、個人の尊厳と基本的人権の尊重を根本的な原則としている。その中でも、憲法第31条に明記された適正手続の保障は、刑事手続における最も基本的な権利の一つであり、違法・不当な逮捕、勾留及び刑罰から国民を守る制度的基盤である。この適正手続の保障は、刑事手続の全過程を通じて例外なく貫徹されるべきであり、たとえ有罪判決が確定した後であっても、その理念が軽視されてはならない。
確定した有罪判決であっても、必ずしもそれが正しいとは限らない。無実の者が誤った判決によって犯罪者として罰せられ、ときには命を奪われ、ときには長期間の身体拘束を余儀なくされることがある。それがえん罪である。国が奪った命や時間は、絶対に取返しがつかない。えん罪は、国家による最大の人権侵害である。
えん罪という不正義は、えん罪被害者とその家族を永続的に苦しめ、裁判の公正に対する社会一般の信頼を根底から揺るがすことになる。有罪判決に誤りがあった場合には、速やかな救済がなされなければならない。
そのための手続を定めているのが、刑事訴訟法第四編の「再審」の規定である。
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現行の刑事訴訟法には、この再審に関する規定がわずか19か条しかない。
そのため、いわば「再審のルール」はほぼ存在しない状態ともいえる。規定があまりにも不足していることの一例として、再審請求が申し立てられても、その期日をいつまでに開くかに関する規定はなく、再審請求人や弁護人が再審請求の理由について陳述する機会に関する規定さえ存在しない。手続に関して本来あるべき数多くの規定が不存在であるという状況は、審理に大きな影響を与える証拠についても同様であり、証拠の開示手続が法定されていないほか、証拠の保管に関する規定も定められていない。
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昨年9月26日、袴田事件の再審公判において袴田巖氏に再審無罪判決が言い渡され、同判決が確定したことで、袴田氏は死刑台からの生還を遂げた。しかし、1966(昭和41)年8月に逮捕されてから、実に58年もの歳月を要した結果、袴田氏は今でも、極めて長期間、死刑の恐怖と隣り合わせにあったことによる障害(拘禁障害)に苦しんでいる。
また、本年7月18日には、福井女子中学生殺人事件において犯人として逮捕され、有罪判決確定後に服役し、満期出所していた元被告人に対して、ようやく再審公判で無罪判決が言い渡された。1987(昭和62)年3月の逮捕から38年もの歳月が経過した後にようやく獲得した無罪判決であるが、この歳月を取り戻すことは不可能である。
当連合会の地域においても、梅田事件、アンドレイ事件など、再審公判においてえん罪であることが明らかとなった事件が複数あり、現にえん罪の被害が生じている。えん罪被害は、決して遠い世界の出来事、他人事なのではなく、いつ誰の身にも起こりうる悲劇なのである。
しかし、再審手続に関する法律の規定が十分に整備されていない現状では、今後もえん罪被害者に対する救済が遅れ、さらなる人権侵害が引き起こされる事態が続いてしまうことが危惧される。
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このように、現在の刑事訴訟法の再審規定は、えん罪被害者の救済のための制度として、機能不全を起こしていることは明らかである。新たな人権侵害をくい止めるため、一刻も早い法改正がなされなければならない。
第2 再審事由を緩和ないし拡大し、再審の開始をより広く認めること
再審事件の多くは現行の刑事訴訟法第435条第6号の規定に基づいて申し立てられており、再審開始のためには「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」が必要とされている。
この新証拠の明白性の要件該当性の判断に際し、白鳥決定、財田川決定は、「疑わしいときは被告人の利益に」の原則(利益原則)が再審手続においても適用されること、確定判決の事実認定につき合理的な疑いを生じさせることができれば証拠としての明白性が認められること、その明白性の判断方法が新旧証拠の総合評価、再評価によることを明確にしている。
しかし、実際の再審事件の審理においては、利益原則とは名ばかりのように、再審請求人に対して過度な立証責任が課される傾向にある。無罪を言い渡すべき「明らかな」証拠という文言から、裁判所が明白性をあまりに厳格に解釈しており、結果として先述の両決定が定めた判断枠組みが適切に用いられず、えん罪被害者の救済につながらない例が多く見受けられる。再審請求時に提出される新証拠が、既に確定している有罪判決の認定事実を根底から覆すほどの明快さを持っていなければならないとされる傾向が強く、再審制度本来の趣旨であるえん罪被害の救済を阻む構造的障壁となっており、再審開始を実現するためには、単に合理的疑いを生じさせる程度の証拠では不十分とされてしまっている。
そのため、両決定が判示したとおり、新旧すべての証拠を総合評価することで、確定判決の事実認定に合理的な疑いが生じれば、明白性の要件を満たすものと判断すべく、これを法律上明文化する必要がある。あわせて、現行法における「無罪若しくは免訴を言い渡(す)…べき明らかな証拠」という文言については、再審事由を緩和ないし拡大するために、「事実誤認を疑うに足りる証拠」などと修正すべきである。
このような法改正により、裁判官が用いる判断基準の明確化と判断における柔軟性を確保し、再審制度が名実ともにえん罪被害者の救済のために機能し得るものとなる。
第3 証拠開示制度や証拠保管制度を設けること
1 証拠開示制度
⑴
再審請求における最大の障壁の一つが、通常審の段階で存在していた証拠、いわば「古い新証拠」の開示がなされないことである。現行法のもとでは、再審請求を行おうとする段階において、えん罪被害者が捜査機関の手元にどのような証拠が存在するのかを正確に把握することができないがために、再審請求の入口にすら立てないという実情がある。
再審公判において再審無罪判決が下された袴田事件や福井女子中学生殺人事件では、いずれも再審請求審段階で開示された証拠が決め手となって再審開始決定がなされ、その後の再審公判における再審無罪判決につながっている。
袴田事件では「5点の衣類」のカラー写真を含む600点以上の証拠が開示され、また福井女子中学生殺人事件では287点もの証拠の開示や関係者の証人尋問の実施などが、いずれも再審開始決定につながった。
さらに、証拠開示がなされたことにより、裁判所は、袴田事件の再審無罪判決では捜査機関による「3つのねつ造」を認定するに至ったほか、福井女子中学生殺人事件の再審開始決定では、確定審検察官の訴訟活動に関し、元被告人の無罪を裏付ける方向の重要な事実関係を認識したにもかかわらずそれを明らかにしなかったことについて、「知らなかったと言い逃れができるような話ではなく」「不利益な事実を隠そうとする不公正な意図があったことを推認されても仕方がない」とし、「公益を代表する検察官としてあるまじき、不誠実で罪深い不正の所為」とまで断じて捜査機関を痛烈に批判するに至った。
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証拠開示の実施がえん罪被害者の救済の決め手となった例はほかにも多数ある。たとえば1985(昭和60)年に発生した殺人事件である松橋事件では、弁護人が再審請求前に検察庁に赴き捜査機関に保管されていた証拠物を閲覧したところ、確定審の被告人が、犯行に使用した後に焼損した旨を取調べ時に自白していた「シャツの左袖」が発見され、その後の再審開始決定、及び再審公判における再審無罪判決につながった。また、東電OL殺人事件や東住吉事件、湖東記念病院事件においても、開示された証拠が審理の上で大きな役割を果たし、最終的に再審公判での再審無罪判決を導いた。
加えて、再審請求審での再審開始決定が即時抗告審でも維持され、現在、特別抗告審に係属中の日野町事件においても、再審請求後に開示された写真のネガフィルムの存在が再審開始決定の大きな決め手のひとつとなった。
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このように、再審手続における証拠開示を契機として再審開始決定がなされたり、再審公判を経て再審無罪判決に至る事例が増えている実態がある。それにもかかわらず、再審手続における証拠開示に関する規定が存在しないことから、未だに証拠開示を受けることができず、再審開始決定に至らずに雪冤が果たされない事案も数多く存在する(その一例として、名張毒ぶどう酒事件、姫路郵便局強盗事件などがある。)。
2016(平成28)年の刑事訴訟法改正により、通常審については証拠一覧表の交付制度が新設されるなど、証拠開示の制度化が進められたのとは対照的に、再審請求手続における証拠開示制度は未だ手付かずのままで取り残されている。平成28年6月3日法律第54号による改正刑事訴訟法附則第9条第3項において「政府は、この法律の公布後、必要に応じ、速やかに、再審請求審における証拠の開示(中略)について検討を行うものとする。」とされたにもかかわらず、現在に至るまで再審請求手続における証拠開示制度が創設される目途は全く立っていない。
法律上の規定の不存在を理由に、弁護人が検察官に対して証拠開示を求めても、検察官は基本的に応じないことが多く、その場合に裁判所が証拠開示に関する積極的な訴訟指揮を行わないことがほとんどである。
先に挙げた各事件は例外的なものであり、検察官による証拠開示が実現したのは、裁判所の訴訟指揮によるところが大きい。しかし、現行法のもとでは、結局、各裁判官の訴訟指揮に関する広範な裁量に委ねられているものであるから、再審請求手続における証拠開示が制度的に担保されていると評価できるわけでは決してない。
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えん罪被害者の速やかな救済のためには、再審請求人ないし再審請求をしようとする者が、早期の段階で証拠開示を受けられることが必要である。そのため、再審請求手続において証拠開示がなされるべきことはいうまでもなく、さらに再審請求前の段階においても再審請求準備のため検察官による全面的な証拠開示がなされるよう、証拠開示制度の改正がなされるべきである。
2 証拠の保管・保存
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昨年6月、鹿児島県警察が2023(令和5)年10月2日付けで作成した「刑事企画課だより」と題する内部文書の存在が明らかとなり、そこには、「最近の再審請求等において、裁判所から警察に対する関係書類の提出命令により、送致していなかった書類等が露呈する事例が発生」し、その結果、「警察にとって都合の悪い書類だったので送致しなかったのではないか」と疑われかねないため、未送致書類であっても不要な書類は適宜廃棄する必要があるなどして、捜査書類の廃棄を積極的に促すかのような記載があった。
加えて「再審や国賠請求等において、廃棄せずに保管していた捜査書類やその写しが組織的にプラスになることはありません!!」との記載もあり、鹿児島県警が捜査機関にとって不都合な書類を組織的に廃棄するよう求めていたことが明らかとなった。
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捜査機関による証拠の収集は、法律に則り、国民の税金で行われるものである。収集された捜査資料は、真実発見に不可欠な公共財であり、国民全体の財産である。
いかなる事件であっても、公判手続に至った場合には、弁護人からの証拠開示請求、あるいは裁判所による証拠開示勧告がなされる可能性が想定される以上、捜査機関が捜査資料を恣意的に廃棄するということは決して許されない。警察による捜査資料の廃棄は、検察官の起訴・不起訴の判断を誤らせるのみならず、ひいては真実発見の途を閉ざし、裁判所の判断を誤らせる危険を生ぜしめることになる。このことは、再審段階であっても何ら変わるところはない。
たとえば、DNA鑑定のように、確定審当時の科学技術の水準が将来的に陳腐化し、あるいは技術的な誤りが発見されることは当然に生じ得る。この場合に、あらためて科学鑑定を実施しようとしたときに当時の証拠(捜査資料)が適切に保管・保存されていなければ、真実の発見を大きく阻害し、えん罪被害者の救済をいっそう困難ならしめることになる。
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現行刑事訴訟法の再審規定には、証拠の保管に関する規定は存在しないが、再審手続における証拠の重要性は繰り返し述べたとおりであるから、明文規定によって捜査機関に適切な証拠保管・保存を義務付けるような法改正がなされるべきである。
第4 検察官の再審開始決定に対する不服申立ての禁止
1
刑事訴訟法第450条は、再審開始決定に関し、検察官による即時抗告を認めていると解釈、運用されている。
実際、検察官が不服申立てを行ったことにより、いったん出された再審開始決定が覆った事例が数多くあるほか、不服申立てがなされたことで、即時抗告審あるいは特別抗告審での審理にもさらに膨大な時間を費やす結果となり、えん罪被害者の救済を著しく遅らせる要因となっている。たとえば、大崎事件では合計3回もの裁判所による再審開始の判断がなされたものの、検察官の不服申立てによって覆っているほか、袴田事件でも2014(平成26)年3月になされた再審開始決定が確定したのは、実に9年後の2023(令和5)年であった。
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現行の刑事訴訟法では不利益再審の規定が削除されていることから、再審手続はえん罪被害者の救済のためにのみ用いられる制度であることが明確にされている。
再審制度は、誤った有罪判決が確定してしまったえん罪被害者の救済のための制度として位置付けられている。そうであるならば、その運用にあたっては、えん罪被害者を速やかに救済するという観点に立脚していなければならない。
職権主義構造をとる再審請求手続においては、検察官は、再審請求人の対立当事者ではなく、そもそも主体的な地位を有する者でもない。検察官は、裁判所が行う審理に協力すべき立場にあるに過ぎないのである。
そのような検察官に対し、再審開始決定に対する不服申立ての権限を認める必要は全くなく、仮に再審開始決定に対して不服がある場合には、その後に開かれる再審公判において、確定判決による有罪の事実認定が正当であることをあらためて主張・立証すればよいだけである。
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再審開始決定に対する不服申立てがえん罪被害者の速やかな救済を遅らせ、人権侵害を幾重にも強いているという事実はもはや看過し得ないものである。えん罪被害者の一刻も早い雪冤を実現するため、再審開始決定に対する検察官の不服申立てを禁止する法改正が速やかになされなければならない。
第5 再審請求人にかかる受継の手続を定めるとともに、再審請求権者を拡大すること
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現行法には、元被告人である再審請求人が死亡した場合などにおける再審手続の受継に関する手続が定められていないことから、たとえ漸く再審開始決定に手が届きそうなところにまで達していたとしても、再審請求人死亡により再審手続は終了し、再審手続を続行することができないこととなる。
現に、日野町事件や名張毒ぶどう酒事件、さらに狭山事件では、再審請求人であった元被告人の死亡により手続が終了し、その親族が新たに再審請求人となって手続を初めからやり直すことを余儀なくされている。
このような事態は、えん罪被害者の救済を著しく遅らせるものであり、刑事事件の審理として訴訟経済にも反するため、再審請求人の受継に関する法整備は急務である。
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また、現行法において、再審請求を行うことができる者は本人またはその親族等に限られているが、えん罪被害者やその家族にとって、再審請求に踏み切ることは容易なことではない。
元被告人の親族の多くは、事件の発生直後から「犯罪者の家族」として世間からの偏見や差別に晒され、長年にわたって数知れない苦痛を強いられている。さらに、事件発生から数十年が経過する中で、元被告人本人やその家族が高齢になったり、病気や死亡などの事情によって再審請求ができなくなるという事例も増えている。
このような場合、法律上は検察官にも公益の代表者としての立場から再審請求を行うことを認めているものの、実際問題としては、真犯人が現れたというような場合の他は、検察官が自らの非を認める形で再審請求をするという事態はおよそ想定し難い。したがって、検察官が公益の代表者として再審請求を行う途は事実上閉ざされているに等しい。
そのため、少なくとも、元被告人が死亡又は心神喪失の状態にある場合には、その配偶者、直系の親族、兄弟姉妹に加え、元被告人からあらかじめ指名を受けた者について、新たに再審請求権を付与するような法整備を行うことが必要である。
加えて、菊池事件では、「ハンセン病患者」として、療養所内の「特別法廷」で、極めて差別的な審理が行われたうえで死刑判決が出され、元被告人が再審請求を行ってきた中で、1962(昭和37)年に死刑が執行された。この事件については、国賠訴訟も起こされ、2020(令和2)年に熊本地方裁判所が、「特別法廷」における裁判手続の違憲性を認定しているが、元被告人の親族は、ハンセン病による差別・偏見の強さから、再審請求人となることができない状況に追いこまれていた経過がある。このような場合には、日弁連や各弁護士会が再審請求権者となって無辜の救済を行う必要性がある。
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以上のとおり、元被告人が死亡した場合の受継手続の整備、及び再審請求権者の拡大について、速やかな法改正がなされるべきである。
第6 再審手続における国選弁護制度を設けること
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刑事裁判における弁護人依頼権は、被疑者・被告人の権利保障の中核をなすものであり、憲法第34条及び第37条第3項において明示されている。この権利を実質的に保障する必要があるからこそ、国は、経済的困窮者に対する国選弁護人選任制度を整備してきたのである。
ところが、有罪判決が確定した後の再審手続においては、現行法上、国選弁護制度の適用が認められていない。これは、極めて大きな問題を孕んでいる。
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えん罪被害者の多くが長期間にわたって不当に身体拘束され、その過程で経済的に困窮し、精神的に疲弊している現状に鑑みれば、えん罪被害者に対する法律専門家たる弁護人の法的支援は必要不可欠である。
また、再審請求を行うには、詳細な証拠の分析、判決文の精査、新証拠の探索など高度な法的作業が求められるが、これらを法律専門家ではない者が独力で行うことは現実的に不可能であり、結果として多くのえん罪被害者が迅速かつ適切な救済を受けられないまま苦しみ続けている。
国選弁護制度の必要性は被疑者・被告人と同様にえん罪被害者においても当てはまり、むしろ、えん罪被害者にこそ求められる制度といっても過言ではない。
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国選弁護制度は、有罪判決が確定した後であっても貫徹されるべきであり、えん罪被害者だけが適用外として扱われるべき理由は全くない。再審手続においても弁護人依頼権の趣旨が空文化することのないよう、国選弁護制度が設けられるべきである。
第7 再審手続中の死刑執行を停止する制度の創設
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間違った有罪判決は、速やかに正されなければならない。えん罪被害者の救済には、本来、一刻の猶予もあってはならない。
しかしながら、現実には、再審請求の申立て、再審開始決定、そして再審公判における再審無罪判決に至るまでには、必然的に相応の時間を要する。再審手続に関する規定が現行法上わずか19か条しかなく、多くの規定が整備されていない刑事訴訟法の現状を踏まえれば、真の雪冤を果たすまでに長期の時間を要することは避けがたい。
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1992(平成4)年に発生した女児2名に対する殺人、略取誘拐、死体遺棄事件である飯塚事件では、元被告人は逮捕当初から一貫して犯行を否認していたが、2006(平成18)年に死刑判決が確定した。
有罪判決の決め手となった当時のDNA鑑定(MCT118型鑑定)は、その後、再審無罪判決が確定した足利事件で行われていたものと同じ手法であり、足利事件の再審請求審での審理において、その信頼性に疑問が呈されていたにもかかわらず、法務大臣は2008(平成20)年、元被告人に対し、死刑を執行した。
しかし、その後の第1次再審請求手続において、当時のDNA鑑定には写真の改ざんなど多くの問題点があったことが明らかにされており、死刑執行後の現在においても、えん罪である可能性が強く指摘されている。
死刑執行当時、飯塚事件は再審開始決定も、ましてや再審無罪も確定していなかった事件ではあるものの、その可能性があり得た中で国家が死刑を執行したことは、死刑が人の生命を奪うという不可逆的で取り返しのつかない刑罰権の行使であることを踏まえると、絶対に看過することはできない。
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また、先述した袴田事件の袴田巖氏は死刑台からの生還を遂げることができたとはいえ、現実には死刑執行がなされていたおそれも大いにあり、その場合には絶対に取り返しのつかない結果となっていた。それでなくても、袴田氏は死刑判決を受けた状態で、約48年もの間、死刑の恐怖に晒されながら身体を拘束され続け、その結果、今なお袴田氏の身体・精神が蝕まれているという事実がある。この事実そのものが、たとえ命が「守られた」としても、えん罪被害者としての十分な救済はあり得ないことの証左である。
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さらに、死刑事件においては、再審による判断がなされる前に死刑が執行されれば、再審制度がえん罪被害者を救済するための非常救済制度として全く機能しないこととなる。人が人を裁くものである以上、刑事裁判には常に誤判の危険性があり、えん罪を生むおそれを内包している。袴田氏に対して現実に死刑執行がなされていたおそれもあり、その場合には絶対に取り返しのつかない結果が生じていたことをも踏まえると、不可逆的な刑罰である死刑の執行については、どのような局面であっても極めて慎重な姿勢で臨まなければならない。
視点を変えれば、現在でも、死刑判決の確定から相当の期間、死刑が執行されていないという実情がある。また、今後、証拠開示手続の創設や検察官による不服申立ての禁止などの法改正がなされた場合には、再審手続が迅速に進行することが見込まれ、死刑執行の停止期間が長期にわたるという事態は低減される。
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死刑制度の存廃については国民的議論を要するものであるが、その議論とは別に、現段階において、少なくとも再審手続中は死刑の執行を停止する旨の法改正がなされなければならない。
第8 結語
よって、当連合会は、国に対し、
1 再審開始事由を緩和ないし拡大し、再審の開始をより広く認めること
2 再審請求前及び再審請求手続における証拠開示制度や証拠保管制度を設けること
3 再審開始決定に対する検察官の不服申立てを禁止すること
4 再審請求人にかかる受継の手続を定めるとともに、再審請求権者を拡大すること
5 再審手続における国選弁護制度を設けること
6 少なくとも再審手続中における死刑の執行を停止すること
を含む、速やかな再審法の改正を求めるものである。
以 上