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声明・宣言

少年法の適用上限年齢引下げに反対する理事長声明

 現在、法制審議会の少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会(以下「法制審部会」といいます。)では、少年法の適用上限年齢を現行の20歳未満から18歳未満に引き下げること(以下「適用年齢引下げ」といいます。)が審議されています。当連合会は、2015年9月7日にも、適用年齢引下げに反対する理事長声明を発出しました。しかし、大変遺憾なことに、適用年齢引下げがなされた場合の刑事政策的措置の内容案が法制審部会で具体化し、かかる情勢等から今後適用年齢を引下げの議論が急速に進むことは必至と考え、改めて本声明を発出することにいたしました。

 まず、適用年齢引下げの根拠として、民法の成年年齢を18歳と改正することに伴う「国法上の統一」などが掲げられています。しかし、民法の改正は取引行為のための判断能力の観点からであり、それも「社会への参加時期を早めることで、大人としての自覚を高める」といった政策的なものであって、そもそも18歳で成熟しているという評価が前提ではありません。他方、少年法の趣旨目的は、精神的な未成熟から非行に走った若年者を矯正教育により更生させることにあり、民法とは全く異なっています。そうである以上、「未成年者」と「少年」との範囲が異なることは当然です。実際、飲酒や喫煙等は、健康や非行防止の趣旨目的から20歳という制限が維持されました。また、子どもの福祉を趣旨目的とする児童福祉法の2016年改正では、社会的養護の範囲が一部22歳に引き上げられてさえいます。

 そして、少年法は、その趣旨目的実現のため、現行で十分有効に機能しています。少年法は、少年の健全育成のため、家庭裁判所の調査義務を定めるとともに、その調査につき、医学、心理学、教育学、社会学その他の専門的知見や少年鑑別所の鑑別結果を活用することとしています。これを受けて、裁判官、家庭裁判所調査官、少年鑑別所技官、付添人などの関係者が様々な取組を行っています。少年の検挙人員が、2016年の段階で、その13年前より74.3%(少年人口比)も減少しており、かかる統計等からしても、少年法が有効に機能していることは明らかです。実際、法制審部会に先立って法務省が開催した「若年者の刑事法制の在り方に関する勉強会」でもこの点が指摘されており、法制審部会においても異論は述べられていません。適用年齢引下げにより、現在家庭裁判所が対応している4割相当が対象外となり、再犯・再非行の増加が強く懸念されるのです。

 法制審部会では、かかる懸念から、「若年者に対する新たな処分」として、起訴猶予となった18歳、19歳を家庭裁判所の手続で保護観察等に付する制度が検討されています。しかし、起訴猶予相当とされるような軽微な事案が対象となる以上、収容鑑別は例外的とされるなど、実効性のある制度となるか極めて疑問です。そもそも、有効に機能している少年法の適用を外しておきながら、それにより生じる弊害解消のために少年法類似の制度を導入しようとすること自体、全く無意味というほかありません。

 適用年齢引下げには必要性も許容性もありません。当連合会として、適用年齢引下げに対し、改めて強い反対の意を表明いたします。

2018年(平成30年)11月24日
北海道弁護士会連合会
理事長  大川 哲也

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