|
|
平成17年度定期大会決議
公的弁護制度の導入に向けた基盤整備を求める決議
- 公的弁護制度は、2006年10月から死刑または無期もしくは短期1年以上の懲役もしくは禁錮に当たる事件について、さらに2009年4月からは必要的弁護事件について導入される。刑事弁護制度は国家の刑罰権発動に対する被疑者・被告人の権利擁護の上で不可欠なものであり、公的弁護制度は弁護人の援助を受ける被疑者・被告人の権利を実効的に担保する制度というべきである。
したがって、公的弁護制度を運用するにあたっては、これに携わる弁護人の弁護活動について、自主性・独立性を確保することが最も重要であり、それなくしては被疑者・被告人の権利擁護を十全なものにすることはできない。
また、公的弁護制度の運営主体は日本司法支援センター(以下「支援センター」という。)となるが、公的弁護制度の運用は、公的弁護人の選任から弁護活動の終了に至るすべての段階で、従前どおり弁護士会の深い関与の下で行われるべきである。
- このような観点から、公的弁護制度を真に充実したものとして運用していくためには、次に掲げるような制度の基盤整備が早急に実現されなければならない。
(1)支援センターが定める国選弁護人の事務に関する契約約款及び事務取扱規程は、公的弁護人の弁護活動の自主性・独立性を損なうことのないよう適切な規定が整備されるべきである。
(2)支援センターが公的弁護人を選任するにあたっては、現行の国選弁護人選任に関する実務を踏まえて、弁護士会が提供する公的弁護人候補者の名簿が尊重され、かつ、公平・公正な配てんが行なわれることが保障されるべきである。
(3)支援センターは、関係行政機関に対し自律性・中立性が確保されなければならず、その組織体制、人事及び運営方法等において、弁護活動を侵害することのないような仕組みが確立されるべきである。
(4)公的弁護人の活動範囲が広大な北海道において、弁護人を必要とするすべての被疑者・被告人が実効的な弁護人依頼権を享受できるように、弁護人との接見交通権を確保する補助的手段として、電話又はテレビ電話による連絡ができるようにすべきである。
(5)公的弁護制度が被疑者段階から公判段階までをカバーするものであることから、公的弁護人にはその活動の実際に見合った正当な報酬が支給されなければならない。そして、報酬支給の基準は明確かつ合理的で弁護活動の実態に即したものであるべきである。
(6)公的弁護制度の円滑な運営を図るためには、支援センターと弁護士会との協働関係は欠かせない。両者の間において公的弁護制度の運営について協定書をとり交わし、公的弁護人の弁護活動の自主性・独立性を阻害しないように、選任や解任、報酬に関する事項が定められるべきである。
また、定期的な協議の機会を設けるなど、運営に関する意見交換の場を確保すべきである。
以上決議する。
2005(平成17)年7月22日
北海道弁護士会連合会
この宣言をなすに至った理由は以下の通りです。
- 2004年5月28日、刑事訴訟法等が一部改正され、従来の被告人国選制度に加えて、被疑者国選制度が導入されることとなった。この公的弁護制度は、2006年10月から死刑または無期もしくは短期1年以上の懲役もしくは禁錮に当たる事件に適用され、さらに2009年4月からは必要的弁護事件にまで適用範囲が拡大される。
公的弁護制度の実際の運用にあたって最も重要なことは、これに携わる弁護人の弁護活動の自主性・独立性が確保されることであり、それによってはじめて被疑者・被告人の刑事事件手続における権利擁護を十全なものとすることができる。
さらに、公的弁護制度の運営主体は支援センターとなるが、現行の国選弁護や当番弁護士制度の運用は弁護士会の深い関与の下ですすめられ、大きな成果を上げており、新しい制度においても、公的弁護人の選任から弁護活動の終了に至るすべての段階で、従前どおり弁護士会が関与し、運営の適正が確保されるべきである。
以上のことを前提にしながらも、公的弁護制度が充実したものとして運用されるためには、以下の制度の基盤整備が早期に実現されることが不可欠である。
- 第1に、支援センターは、国選弁護人の事務に関する契約約款を定めることとされ,支援センターと当該弁護士との間の業務委任契約には同契約約款が適用されることが予定されている。契約約款の詳細についてはいまだ明らかにされていないが、その内容次第では、弁護人の弁護活動の自主性・独立性が害されることも懸念される。もしそのようなことがあれば、弁護人の弁護権の侵害だけにとどまらず、被疑者・被告人の権利擁護についても重大な結果を招来することになる。したがって、上記契約約款の内容は、弁護活動の自主性・独立性が阻害されることのないよう適切かつ合理的なものでなければならない。
また,支援センターは,契約弁護士が取り扱う事務の処理に関し「法律事務取扱規程」を定めることとされているが,これについても同様のことがいえる。
- 第2に、公的弁護制度においては、裁判所からの弁護人選任照会に対し、支援センターが名簿に基づいて国選弁護人の候補者を指名し通知する制度運用となるが、その弁護人指名の運用が恣意的になされないようにする必要がある。
現在、国選弁護人の選任が弁護士会の作成した国選弁人候補者の名簿に基づいて行われ、また、弁護士会が被疑者段階で派遣した当番弁護士が公訴提起後国選弁護人として選任されるなど、弁護人の選任手続に弁護士会が深く関与しており、こうした方式は、国選弁護人選任実務として十分定着し、かつ実績を上げている。
今後の公的弁護制度のもとにおいても、弁護士会の関与の仕組みが引き続き維持され、公平かつ適切な配てん業務が行われるべきである。とりわけ、支援センターが用いるべき国選弁護人契約弁護士名簿については、現在の実務が反映され、かつ一定水準の刑事弁護の質が確保されるよう弁護士会が提供する名簿が尊重されることが不可欠である。
- 第3に、公的弁護人の選任から業務終了までの手続を行なう支援センターは、その組織自体が自律的かつ中立的な機関でなければならない。支援センターが外部機関、特に関係行政機関からの不当な干渉を許すようなことがあっては、公的弁護人の刑事弁護活動の自主性・独立性を確保することは難しい。今後は細部にわたって支援センターの組織体制、人事及び運営方法などが検討されることになるが、その際にも先に触れたように弁護人の個々の事件の弁護活動の侵害とならないように細心の注意が払われなければならない。
- 第4に、公的弁護制度においては、弁護人が被疑者段階から弁護活動に携わることになるが、特に被疑者段階での接見は弁護活動の核心をなす重要なものであり、その機会は十分に確保されなければならない。弁護人にとって、一刻も早く被疑者と接見して、その言い分や要望を聞き、早急に弁護方針を確立することが求められる。ところが、北海道においては地域が広大である上に交通手段も不十分であり、公的弁護人の活動には地域性による様々な困難を伴っている。先に述べたとおり、個々の公的弁護人が被疑者や被告人との十分な意思疎通を図ることがより良い弁護活動にとって必要である以上、地域性を考慮した弁護人と被疑者・被告人との接見の手法も考えられなければならない。その意味で、適正な場所に拘置所を増設することに加えて、接見交通権を確保する補助的手段として、電話やテレビ電話等の通信手段を駆使した接見方法の実現が早急に求められている。
- 第5として、公的弁護人の報酬は弁護人の活動に対する正当な評価に基づくものでなければならない。国選弁護制度が憲法上の要請であることを踏まえ、かつ適切な弁護報酬が確保されることは、被疑者・被告人が弁護人の援助を受けることを実質的に保障するための大前提であるとの視点に立脚して、明確な評価基準に基づき正当な報酬が支給されなければならない。
- 第6に、公的弁護の担い手が弁護士である以上、弁護士会と支援センターとの緊密な協働関係が必要である。弁護士会は公的弁護人の活動に携わる弁護士が弁護活動に不当な妨害を受けないように、弁護人の自主性・独立性を確保するための協定を支援センターとの間で締結すべきである。また、日常業務の問題点や改善策などは弁護士会や支援センターの一方の力だけで解決できるものではないのであるから、より良い制度を作り上げていくためにも、弁護士会と支援センターが定期的な協議の場を設けて意見交換を積極的に行なっていく必要がある。
- 最後に、いうまでもなく刑事弁護はすべての弁護士・弁護士会の責務であり、その責務はこれからも変わることはない。新しく始まろうとする公的弁護制度も、一人ひとりの弁護士が積極的にこれを担い支えていくことによって成り立ち、また維持されていくものである。
当連合会においては、道内4会の多くの会員が公的弁護制度の担い手として積極的な役割を果たすことができるよう啓発に努める必要があり、それと同時に、弁護士・弁護士会は、研修の実施、実務経験交流その他の方策により、刑事弁護活動の一層の質的向上を図るべく努力しなければならない。
以 上

戻 る |
|
|