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道弁連大会

議案第5号(決議)

4会共同提案

司法修習費用の給費制復活等を求める決議

当連合会は、政府及び国会に対し、

  1. 司法修習費用の給費制を復活させるとともに、第65・66期司法修習生に対しても遡及的に救済するための立法措置をとること
  2. 司法修習生の修習専念義務の事実上の緩和につながる兼業許可の運用を「司法修習生に対する経済的支援」の名の下に行わないこと

を求める。
以上、決議する。

2013年(平成25年)7月26日
北海道弁護士会連合会

提案理由

  1. 本年6月26日、法曹養成制度関係閣僚会議(以下「閣僚会議」という。)の下におかれた法曹養成制度検討会議(以下「検討会議」という。)が「法曹養成制度検討会議取りまとめ」(以下「取りまとめ」という。)を発表した。
      このうち、司法修習生に対する経済的支援については、「貸与制を前提」とした上、①実務修習地への転居を要する者に対し「旅費法に準じて移転料を支給する」こと、②集合修習期間中、司法研修所への入寮を希望する者のうち、通所圏内に住居を有しない者については「入寮できるようにする」こと、③修習専念義務を維持しつつも従来の運用を緩和して「司法修習生が休日等を用いて行う法科大学院における学生指導をはじめとする教育活動により収入を得ることを認める」ことの3点につき、可能な限り本年11月から修習が開始される第67期司法修習生から適用する旨が提言されている。   7月16日に法曹養成制度関係閣僚会議が発表した「法曹養成制度改革の推進について」においても、「最高裁判所において、可能な限り第67期司法修習生から、次の措置を実施することが期待される」などと、上記の「経済的支援策」への支持が表明されている。

  2. しかしながら、上記の「経済的支援策」は、以下に述べるとおり、極めて問題が大きいものであると言わざるを得ない。
    すなわち、第1に、「中間的取りまとめ」を対象とするパブリック・コメントの募集に対して寄せられた意見、とりわけ法科大学院生をはじめとする当事者の声を無視したものである。
    パブリック・コメントの募集に対して合計3119通もの意見が寄せられたところ、うち2421通が「法曹養成課程における経済的支援」に関するものであった。しかも、その圧倒的多数が司法修習費用の給費制を復活させるよう求める趣旨のものであった。それにもかかわらず、検討会議において配布・公表された「概要」には、どの意見・理由にどれほどの数が寄せられたのかが全く明らかにされていないばかりか、その後に開催された検討会議において一部委員に指摘されたにもかかわらず、こうした意見の比率や内容についてはほとんど検討の対象にされなかった。
    このような取扱いは、本年4月3日の衆議院法務委員会において、谷垣法務大臣が、パブリック・コメントに「受験生も結構ですし、大学院生あるいは若手法曹に十分御意見を寄せていただければというふうに期待をしている」と答弁したこととも矛盾するものであり、国民の声を聴いたという体裁をつくるためだけにパブリック・コメントを募集したとの批判を免れない。

    そもそも、早々と「貸与制の維持」を取りまとめた「法曹の養成に関するフォーラム」(以下「フォーラム」という)での議論が不十分であったからこそ、2012年(平成24年)7月、衆参両院での「裁判所法及び法科大学院の教育と司法試験等との連携に関する法律の一部を改正する法律」の可決成立に際して、「我が国の司法を支える法曹の使命の重要性や公共性に鑑み、高度の専門的能力と職業倫理を備えた法曹を養成するために、法曹に多様かつ有為な人材を確保するという観点から、法曹を目指す者の経済的・時間的な負担を十分考慮し、経済的な事情によって法曹への道を断念する事態を招くことがないようにすること」等について、新たに設けられる合議制の組織に「特段の配慮」を求めた附帯決議がなされたのである。そして、かかる附帯決議を踏まえて、新たに閣僚会議の下に設けられた検討会議には、フォーラムの委員13名のほか新たに4名が加えられた。
    かかる経緯に鑑みれば、検討会議での取りまとめは、フォーラムでの「貸与制維持」という結論に拘泥することなく、かかる附帯決議の趣旨を十分に尊重して行われるべきであった。それにもかかわらず、現実には前記の取りまとめに至ったことは、極めて問題である。

  3. 第2に、われわれが特に憂慮するのは、検討会議が「取りまとめ」において、修習専念義務を維持しつつも従来の運用を緩和して「司法修習生が休日等を用いて行う法科大学院における学生指導をはじめとする教育活動により収入を得ることを認める」などと提言したことである。
    すなわち、司法修習生は、司法に携わる者に求められる中立性・公平性を維持する上でも、また、分野別実務修習は分野ごとにわずか2か月、全体でもわずか1年という短い修習期間(この修習期間そのものを延長し、特に前期修習を復活させる必要があることはもちろんである)に実のある臨床教育が受けられるようにするためにも、その期間は文字通り修習に専念させる必要がある。そのためには、休日等といえどもアルバイト等に時間を費やさすべきではないのであり、司法修習生の兼業許可に関する運用の緩和は直ちに修習専念義務それ自体の事実上の緩和につながるものであって、これは、まさに本末転倒である。
    また、当連合会を構成する旭川、釧路、そして函館の三弁護士会の管内には法科大学院が存在しないため、各修習地で実務修習を行う司法修習生は、休日等を利用しても法科大学院での学生指導などは事実上困難であり、その意味でも「司法修習生に対する経済的支援」とは到底評価できないものである。
    司法修習生に対する経済的支援策として真に求められているのは、給費制の復活にほかならない。

  4. すでに第65期の司法修習は終了し、第66期司法修習生は全国各地で分野別実務修習に従事しているが、「貸与制」の下で司法修習を受けることを余儀なくされた司法修習生の不平等感、将来に対する経済的不安感は深刻なものであり、それが法曹志望者数の減少傾向に拍車をかける一因にもなっていることは、検討会議においても、つとに指摘されているところである。
      したがって、司法修習費用の給費制を復活させる立法措置がとられるに際しては、第65・66期司法修習生に対する遡及的な救済措置も必要不可欠である。

  5. 当連合会は、2009年(平成21年)から2011年(平成23年)まで三度にわたり、司法修習生の司法修習費用の給費制の維持ないし復活を求める大会決議を行なった。これは、司法修習生に対する経済的支援の必要性のみならず、三権の一翼を担う司法インフラを国の責任で整備することが司法サービスの受益者たる国民のためにも必要な制度である、と考えるからにほかならない。
      そして、この間のパブリック・コメントにかかる取組みを通じて、改めて、司法修習費用の給費制を復活させることは、国民の理解と支持が得られるものであることを確信した。

よって、主文のとおり決議する。

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